1月のおはなし ~厄除けのお大師さま~

謹んで新春のお慶びを申し上げます。

「一年の計は元旦にあり」ということで、皆さまはご本尊さまに何をお願いされたでしょうか。なかなか絞りきれず、次から次へとお願いごとが浮かんでくるのもまた楽しいものです。こうしたなか、「厄除け」を願った方も多いのではないでしょうか。そこで今回は「厄除け」のお話しです。

寛永寺の諸堂で特に厄除けにご利益があると言われているのは、「開山堂(両大師)」です。このお堂にはお2人の大師がお祀りされているため「両大師」と言います。まず当山を開かれた慈眼大師(じげんだいし)天海(てんかいかい)さま。そして天海さまが大変に尊敬された「慈恵大師(じえだいし)良源(りょうげん)」さまです。厄除けの大師として霊力があると信仰されているのが、この良源さまなのです。

良源さまは平安時代の方です。この時代の延暦寺は火災が相次ぎ、建物が失われたばかりでなく、多くの書物が焼失したことから学問が振るわないという、大混乱した時代でした。そこで良源さまは行動力を発揮し、諸堂の再建・整備を進めるだけでなく、また山内の規律を正し教学の振興を図ったことから、その後の比叡山は多くの人材を輩出することになりました。

このような良源さまについてさまざまな伝説があります。特に有名なのは、ご祈祷をする良源さまのお姿が「鬼」のように見えたというもの。こうしてその霊力による封魔・厄除けのご利益が絶大だったことから「角(つの)大師」として、ご自身が崇拝される対象になったのです。伝説のひとつをみてみましょう。

いつの時代でしょうか、良源さまがこの世に現れ「私を写した絵画を宮中に安置なさったならば、天皇陛下のお体(=日本の安全)をお守り申し上げましょう」とおっしゃったので、いまでも宮中にお姿が安置され、平和がそれ以来ずっと続いているのです。(『東叡山寛永寺元三大師縁起』)

ちなみに良源さまは、正月3日がご命日であることから「元三(がんざん)大師」とも呼ばれ、なんと「おみくじ」を始めた方でもあります。

年の初めに厄除けと、良源さまにあやかっておみくじで運試し、などいかがでしょうか。

「成仏の姿を見せよう」とおっしゃって自ら輝く良源さま(住吉具慶筆「元三大師縁起絵巻」寛永寺蔵)