7月のおはなし ~お盆を迎える~

お盆」は『盂蘭盆経(うらぼんきょう)』というお経に説かれるお話、すなわちお釈迦さまの弟子である目連尊者(もくれんそんじゃ)の母が飢えと渇きの世界で苦しんでいたところ、お釈迦さまの教えにもとづき供養して救われた、という故事が元になっています。一般的には7月13日夕方から16日までとされ、寛永寺ではその前日である7月12日に法要を行い、お盆を迎える準備を行います。

ところが中国古来の考え方では、7月1日は「地獄の釜の蓋が開く日」と考えられ、苦しみの世界で迷う無縁仏がこの世に再来する時期であるとされてきました。すると、法要によって安らかになった私たちのご先祖さまの周辺が、急に騒がしいことになってしまいます。

そこで仏教では、ご先祖さまについてくる無縁仏を無視するのではなく、なんとかお祀りしようと考えました。しかし無縁仏は不安定で荒々しいと考えられたため、安らかに清まっているご先祖さまと単純に一緒に祀るというわけにはいきません。そこでご先祖さまを祀る「精霊棚(しょうりょうだな)」は室内で、無縁仏はあえて屋外の「施餓鬼壇(せがきだん)」に分けて祀ることで、帰る家がない気の毒な霊を私たちの手で供養するという方法を考え出したのです。つまり、お盆に自身の先祖を供養することは、仏教で考えるあらゆる世界の霊(三界万霊 さんがいばんれい))もすべて一緒に供養していることに他ならないのです。

 さて、「灯篭流し」もご先祖さまが無事極楽浄土へ帰れるよう、祈りと感謝の気持ちを乗せて流します。本年も7月17日夕刻より、下谷仏教会主催の「流燈会(りゅうとうえ)」が当山不忍池辯天堂にて執り行われます。どなたでもお参りいただけますので、皆さま是非足をおはこびください。

不忍池辯天堂