1月のおはなし ~天台宗が開かれた日~

天台宗を開いた人物を述べなさい……このように書き出すと、試験を思い出した方も多いのではないでしょうか。もちろんこの答えは伝教大師(でんぎょうだいし)最澄(さいちょう)さま。遣唐使船に乗って中国に渡り、天台の教えを中国から日本に伝えたことは広く知られています。

 では「天台宗が開かれた日」はいつでしょうか?あまり知られていないのですが、実は1月26日を天台宗は「開宗記念日」としています。

 今から約1200年前のことです。最澄さまは「天台宗を国に認めてもらいたい」と何度も願い出ていました。当時の「正式な修行僧」は、修行の費用を国からすべて賄ってもらうという制度になっており、東大寺をはじめとする奈良仏教の各宗派にその割り当てがなされていました。つまり、国家予算で僧侶の養成が行われていたのです。最澄さまも天台宗を認めてもらうためには、予算の割り当てをいただきたいと考えました。

 こうして最澄さまは朝廷に願い出るのですが、その際にこれまでの各宗派がダメだから天台宗を認めてほしいという言い方はなさいませんでした。ではどのようにおっしゃったのか、最澄さまのお言葉を見てみましょう。

 

「網目が1つしかない網では鳥を捕えることが出来ないように、これまでの各宗派だけだと、日本中に仏教を広めるにはカバーしきれません」(『天台法華宗年分縁起』)


 伝教大師が天台宗を開こうとお考えになった根底にあったのは、日本仏教の裾野を広げるために天台宗を認めてほしいといったものでした。つまり他者を批判し排除してしまうと、裾野が広がらなくなってしまうのです。こうして「天台宗に年2人の正式な修行僧を認める」という許可が下りたのが、延暦25(806)年1月26日だったのです。

 年頭にあたり、他者を排除することなく自身の主張をした最澄さまの姿勢に、改めて感じ入りたいものです。